空き巣は、留守にしている家に何らかの手口で侵入し、金品を奪って逃走する犯罪者です。
ではなぜ、空き巣にはその家が留守であることが分かるのでしょうか?
また、侵入しやすい経路など、どのように選んでいるのでしょうか?
これらの事を見極めるには、空き巣独特の勘に頼っているわけではありません。
空き巣はターゲットとなる家を下見して、住人の留守の時間帯や侵入・逃走経路をきちんと見極めてから犯行に及ぶのです。
ここでは空き巣の下見の方法と、空き巣に入るための侵入の手口を紹介し、それに対する対策について考えていきます。
空き巣はどのような手口でターゲットとなる家を下見するのか?
空き巣と言っても黒っぽい服装に頬かむり、唐草模様の風呂敷といった古典的な服装をイメージしてはいけません。
現代の空き巣は下見の段階から、ターゲットとなる地域に違和感がない服装をしています。
住宅街であれば普段着、工事業者を装った作業着、訪問販売を装ったスーツといった服装で、周囲に溶け込みながら下見を行います。
近くに大型スーパーやホームセンターなどの他県ナンバーの車が置いてあっても怪しまれないような場所がある場合には、そこに車を置いて周辺を下見することもあります。
空き巣はまず、構造や立地上侵入しやすそうな家をターゲットに選びます。
その時のチェックポイントは
- 付近に逃走用の車を置いても怪しまれないか
- 人目に付きにくいところに窓はあるか
- ベランダの囲いが柵ではなく塀であるか
- 普段から施錠する習慣がある家か
- 他の空き巣が付けたマーキング(家族構成や留守の時間帯を示す記号)があるか
- 付近に線路や幹線道路がないか
- 窓やドアなどにどの程度の防犯対策がしてあるか
- 窓のクレセント鍵は開けやすい物であるか
といった点です。
このような構造上のチェックは一日あればほぼ終わっていまいます。
しかし、時には一週間もかけて下見を行う空き巣もいます。
そのような空き巣のチェックするポイントは、住人の家族構成や生活パターンです。
例えば、家族は何人で、全員が留守にする時間帯は何時から何時までか、どの日に仕事が休みで家に人がいるパターンが多いかといったことを時間をかけて調べ上げます。
また、近所づきあいが盛んな地域であるかどうかも空き巣にとっては大きな問題です。
知らない人が歩いているだけで、不審を抱かれるほど近所づきあいが密な地域では、空き巣は犯行を行いにくくなります。
空き巣を下見の時点であきらめさせる対策はあるのか?
空き巣は入念な下見を行いますが、どのような対策を行っていれば下見の段階であきらめてくれるのでしょうか?
残念ながら近くに幹線道路などがあり、ガラスを割るときの音が目立たなかったり、人通りの少ない場所に家があるなどの立地上の条件は変えようがありません。
しかし、空き巣に入られやすい構造上の欠点は、防犯対策を行うことで空き巣を下見の段階であきらめさせることができます。
そのための防犯対策を以下に解説していきます。
玄関ドアや家中の施錠を徹底して行い、無施錠の出入り口を無くす
警視庁のホームページに記載されている平成27年度の空き巣の侵入手段の中で無施錠は一戸建てで46.5%、三階以下の集合住宅で44.7%、四階以上の共同住宅で41.3%となっており、いずれの場合も侵入の手口の一位になっています。
この無施錠は玄関ドアだけではなく、窓も含まれます。
空き巣はトイレのドアのような小さな窓からも侵入してくるので、「ここは大丈夫だろう」と油断していると、そこから空き巣に侵入されてしまうことも考えられます。
小さな窓でも、常に無施錠の状態にしておくと、空き巣に侵入経路として下見の際に目を付けられてしまいます。
どんな窓でも必ず鍵をかけるようにしましょう。
たったこれだけのことで空き巣に入られる確率がぐっと下がります。
窓のガラスに防犯フィルムを貼り割れにくくする
防犯フィルムは窓ガラスに貼ることでガラスの強度を上げ、割れにくくする効果が得られるフィルムです。
空き巣が施錠された窓から侵入する場合、ガラス破りという方法を使います。
ガラス破りとはクレセント錠近くのガラスを割って手が入る程度の穴をあけ、そこから手を入れてクレセント錠を開錠するという手口の事を言います。
このガラス破りを行う際に、窓に防犯フィルムが張られていると、窓ガラスを割ることが困難になり、手を入れる穴を開けるのに時間がかかります。
空き巣は目を付けた家に侵入するのに時間がかかるのを大変嫌がります。
防犯フィルムを貼っただけではガラスが完全に割れなくなるわけではありません。
しかし、空き巣が侵入するのに時間がかかるようになるため、侵入をあきらめさせることができます。
出入りが可能な大きな窓には補助錠を付ける
空き巣はガラス破りを行う際には侵入が容易な比較的大きい窓を選ぶ傾向があります。
その大きな窓が外部の人目につかないような場所にあるなら、さらにその確率は高まります。
例えば囲いが塀になっているベランダの窓などはかなり狙われやすいと考えたほうが良いでしょう。
このような大きな窓には、補助錠を付けることをおすすめします。
こうすることによってガラス破りを行うために数か所のガラスを割る必要が出てくるため、侵入に時間がかかるようになります。
また、ガラスを割る際には特有の音がします。
この音が近所に聞こえた場合、近隣の住民が異常に気付くことも考えられます。
そのガラスが割れる音が複数回近所に響き渡ることを考えると、空き巣も侵入を躊躇します。
ですので、補助錠を付け、ガラス破りの手間を増やすことは空き巣の侵入を防ぐことに大きな効果があります。
この補助錠と防犯フィルムを組み合わせて使うことで防犯効果はさらに高くなります。
侵入が予想される窓に窓用振動センサーを設置する
窓用振動センサーとは、スイッチを入れておくと、窓に大きな振動が加わった際に大きなブザー音が鳴る防犯グッズです。
この窓用振動センサーは付けておくだけでも空き巣がその窓からの侵入を避けるようになるので、あえて窓の目立つところに設置しておくと良いでしょう。
この商品を選ぶ際に大切なのは、センサーのスイッチが外部から分からないところについている商品を選ぶことです。
せっかくセンサーを設置していても、スイッチがオフになっていることが外部から見えてしまっては、効果がなくなってしまうからです。
この窓用振動センサーは「窓用センサー設置中」などと書いたステッカーも一緒に貼っておくとさらに効果的です。
このセンサーが他の防犯グッズより優れているのは、窓の外から見てすぐに防犯対策がしてあると空き巣に気付かせることができる点です。
空き巣が侵入に及ぶ前、下見の段階でもその家の防犯意識の高さに気付き、ターゲットから外す可能性もあります。
玄関ドアに電子錠を追加し無施錠の状態をなくす
電子錠とはカードキーや暗証番号で開錠を行う鍵の事で、玄関ドアに補助錠として設置することができます。
この電子錠にはオートロック機能が付いているので、たとえ玄関のメインの鍵をかけ忘れても無施錠の状態になることがありません。
通常の鍵を使う方法とは全く違うシステムで稼働するため、施錠された玄関を開錠するためのピッキングやサムターン回しも通用しません。
しかし、暗証番号式の電子錠の場合には、暗証番号を見破られないようにする必要があります。
最近では電子錠の性能もかなり向上してきており、指紋などの生態認証システムを採用したものや、スマホを使って開錠するものなどもあります。
便利な電子錠ですが、他の防犯グッズに比べて高価なので、なかなか手軽に導入できるものではないところが欠点であると言えるでしょう。
マーキングされていないか玄関付近を確認する
マーキングとは空き巣が下見をした内容をその家の玄関近くの分かりにくい場所に記号で記録しておくことを言います。
アルファベットや数字、カタカナなどを組み合わせた暗号を油性ペンなどで描きこんでいきます。
この暗号は普通の人が見ただけではただの落書きにしか見えません。
しかし、空き巣本人や窃盗団の一員など意味が分かる人が見れば、その家の家族構成や留守の時間帯、時には裕福な家庭かどうかまで一目瞭然に分かるようになっています。
記号の意味ですが、Mは男性、Wは女性、Cは子供、数字は留守の時間帯や家族の人数などを表現しています。
例えばMWC210-15と書いてあった場合には、男性一人、女性一人、子ども二人の家族で、午前10時から午後3時までは留守、といった情報を読み取ることができます。
このマーキングに気付いたら、すぐに消しておきましょう。
そうすることで、空き巣に「下見に気付いている」というメッセージを伝えることができます。
それ以外に空き巣の下見にできる対処法はないの?
ここまで、家の構造上の欠点をカバーするための防犯対策を紹介してきました。
実はこのようなハード面での防犯対策以外にも、空き巣の下見に対処する方法はあります。
それはきちんと近所づきあいをしておくことです。
近所づきあいを行い、地域のうわさや情報を共有するうちに、空き巣や不審者の情報も早い段階で得ることができます。
また、近所の住民の顔を知っていれば、下見を行う空き巣のような不審者にもすぐに気づくことができます。
他の家が下見されているようならば、その家に下見されているかもしれないことを伝えることもできますし、逆に自宅付近に不審者がいた場合にはそのことを教えてもらえます。
また、交番にパトロール強化を依頼に行くときも、一人で行くより近所の住民と一緒に行くことで、警察側に事の重大さを理解してもらいやすくなります。
このようにその地域全体で不審者に対処することで、空き巣犯罪を未然に防ぐことができます。
まとめ
ここまで、空き巣の下見の手口と、それに対する防犯対策について説明してきました。
空き巣は下見する地域に溶け込みやすい服装で下見を行うので、なかなか空き巣の下見であるということに気付くことはできません。
下見の際に空き巣は構造上入りやすい家か、家族構成や家が留守になる時間、そしてどの程度その家の防犯意識が高いかといったことを調べていきます。
家の構造や生活パターンはなかなか変えられません。
しかし、防犯意識を高め、家に侵入されにくいように防犯対策を施すことで空き巣の下見に対処することができます。
防犯対策を施す際には、外部から見て対策がなされていることが分かる防犯対策を行うことで、空き巣に下見の段階で犯行をあきらめさせることができます。
空き巣の侵入方法のパターンを知り、下見の段階で犯行をあきらめさせることができるような防犯対策を行っておきましょう。